(2)子どもに自由を!
そのような息子と「ひらめの合宿」経験から、子どもに自由を与えることの大切さを感じました。その第30回で「ひらめの合宿」そのものが幕を閉じ、“自分にできることは?”と考え、学生たちと難聴児親の会との「ふれあい合宿」を始めたのです。それを続けながら、子どもたちの変容など成果もある一方、学生たちの子どもへのかかわりがありきたりのままというところから抜け出すのが課題となっていました。
その頃出会っていた「親学習プログラムSTEP」を一部の学生に試しての合宿で、それまでとは異なるやりとりを耳にしたのです。1週間あまりの合宿の中日の午後、STEP未受講の学生たちが「そろそろ夕食の食材を分けておいてあげなきゃ」と言うと、STEP受講の学生たちが、「そんなこと、子どもたちができるよ」と返したのです。私からすれば「ええっ、初めて聞くやりとりだぞ」と耳をそばだてました。未受講の学生たちの「食材の多い少ないがあったり、それでのケンカなどがあったりすると困るから」に対しても、「そうなったとしても、私たちが入って話し合い、両者が満足する解決へ向けて話を進めることができるよ」と言ったのです。“子ども能力への信頼”も“自分たちの能力への信頼”も雲泥の差が生じていると感じる出来事でした。
子どもに自由を与えられないのは、かかわっている大人自身の“子どもの能力への信頼”などが低いことに気づかされました。
その信頼は、子どもが何でもうまくできるというような過信ではありません。もちろん、失敗もするけれど、その失敗からより良い行動を学ぶ力をもっていると信じることです。それをもとに、子どもの試行錯誤につきあうことのできる、そんな大人であってもらえるといいなあと感じたことでした。