(4)非現実世界から現実世界へ

 山形県が「さんさんプラン」という少人数学級編成事業をスタートさせ、その一員として小学校にかかわることになりました。先生方に聞き取り調査を行うと、そのメリットとして、「今までよりも一人ひとりの子どもにより多くかかわることができる」といった、かかわりの量的増大にのみ注目がありました。そこで、先生方に「かかわりの質を変えるチャンスでは?」と投げかけ、「夏休みにSTEPを学んでいただける余地がある」と伝えて、希望者を募りました。担任の8割ほどが受講してくれました。

 毎学期末に採っていた子どもへのアンケートから、因子分析で「教師のかかわり」因子が一つに収束していくプロセスがありました。子どもから見て、教師のかかわりが首尾一貫したものになっていっていることが確認されたのです。さらには、Q-Uアンケート結果で、3年生では学期が進むにつれてほぼ全員が満足群に集中していくものの、学年が進むと、健常児はそうでも、発達障害児がそうとは言えない様子が観察されました。これに関する解釈は、まだ3年生なら二次障害が形成されていてもそれを強化せずに済むが、4年生以上になると、すでに形成された二次障害を払拭するには至らなかったのではという解釈が先生方の理解として共有されました。以降、「ならば、このSTEP的アプローチを積み上げていくことが二次障害をつくらず、かつ、高学年になっても発達障害児が適応的なのでは?」との予測が共有され、その後の取り組みにつながりました。

 3年間の積み上げの結果は、ある意味、SDGsの目標4の「質の高い教育をどの子にも」が達成されたと言えます。知・情・意の人格の基盤がよく育ったのです。それは、クラスによっての違いもあり、課題は残りましたが、私にとっては、公教育でここまでできるということを見せていただきました。昔の私の夢は自分の学校をつくることでしたが、公教育でここまでやれるのなら、それを支援することこそ、多くの子どもの幸せにつながると思わせてもらえた経験となりました。