(8)あらためて植木に例えると…

 子どもの発達につれて、その環境つまり関係性のあり方も変えていくことが求められます。植木鉢の小さな木だとしても、何年も小さい鉢のままでは、いくら水と肥料が与えられてもすっかり根が張りきり、新芽も元気なものを出せず、苦戦するようになります。少し大きめの鉢と新しい土に植え替えることが求められます。つまり、家族の関係性も教師と子どもの関係性もそのように変化を意識的に進める必要があるのです。関係性/システムをつくるのはコミュニケーションです。

 アドラー心理学では、人の精神的健康を損なう最大の要因が“タテ”の人間関係と理解します。生まれ出たときはやむを得ないが、意識的にその子の発達につれて親子関係も教師-子ども関係もヨコにしていき、良い自立が迎えられることを切に祈ります。

 そして、日本は、戦後まもなく80年を迎えますが、与えられた“民主主義”でも今なお未熟な民主主義社会が継続しているようです。学級内の集団決定でも“多数決の原理”のみが活用されています。民主主義の基本原則には、それだけでなく、“少数意見の尊重”もありますが、ほとんど活かされていません。上述したように、親や教師の子どもへのかかわりにある、“ほめる・叱る”は“タテ”のコミュニケーションです。それらに替わる考え方と方法があります。集団の話し合いも民主的な解決があります。より成熟した民主主義社会として機能していくには、その民主的な関係・経験を子ども時代に体験させることのできる親や教師であってほしいのです。